泡沫の薔薇 -Side Angelo-

「では貴様はどうなのだ!」
「たとえ流れ弾だろうが、貴様が撃ったことに変わりはない!」
 
 激情のままに叩きつけ、足蹴にした身体は、確かに民間人の少年の柔らかさだった。何も知らない、いいとこ育ちのボンボンの顔だ。言われてはじめて人殺しの実感を得た、瑕を宿した蜂蜜色の瞳。
 礼儀知らずの不愉快な小僧。「顔を見せろ」だなんて挑発的な言葉は放っておけばよかったものを、フロンタルは言われるがままに仮面を外して礼を尽くし、柔らかな薄い布で幾重にも包むかのごとく、丁寧に言葉を重ねてみせた。背後から、耳元に唇を寄せ、囁くように。

 振りおろした右足に私怨が混ざらなかったか……と問われれば、少しばかり言葉に詰まる。
 これから大切に育てるつもりだった将来有望な部下をあっさり殺られた。加えて本人は……そう、まるで「うっかり踏み潰した蟻には気づきませんでした」とでもいった風情で「人の命を奪う権利は誰にもない」と宣った、その無神経さがとてつもなくカンに障ったのは紛れもない事実だが。
 ファッションなどであるはずもない、棄民の王としての象徴たる仮面をすんなり外して、そのうえあの距離感だ。何も感じないわけがないではないか。
 
 にも関わらず、あろうことか蹴ったこちらが咎められたのである。バナージくんは実感がない、無我夢中だったのだろう——戦場に出て武器を振り回しておいて、人を殺す認識も覚悟もないだなんて、そんなことがあるものか。
 馬鹿にしている。フロンタルの前だからと手加減せずに、やはりあの左肩は蹴り砕いてやればよかったのだ。あんなこどもを『協力者』だなどと、

「ご機嫌ななめだな」

 小さな笑いを交えて発された声に、怒りに溶けていたアンジェロの意識は一瞬で現実へと引き戻された。
 執務椅子ごと振り返ったフロンタルが、奥の庭園へと抜ける扉のそばに佇むアンジェロを楽しげに眺めている。
 浅めに腰かけて見事な体躯を背もたれへと預け、あり余る長い足を優雅に組んで、肘掛けに頬杖をついてこちらを見遣る姿。それはまさしく王の風格で、何処の馬の骨ともわからぬ少年におもねることなどあってはならないと改めて思わせるものだった。
 庭から射し込む光が防眩フィルターを赤く煌めかせて、アンジェロは苛立ちを隠しきれない瞳を主からそらした。
「……普段と変わりません」
「そうかな?」
 フロンタルの声色にはからかうような響きがある。
 いつもであれば言葉でのじゃれ合いは少しばかりの甘さを感じさせ——ひとたび執務を離れれば『そういう関係』でもあるわけで——胸の内にあたたかな熱と幸福な擽ったさをもたらすものだったが、生憎と今日は心のひだをざらりと逆撫でするばかりだった。
 
「……《ガンダム》の調査状況、確認してまいります」
 機体を見ればまたも不快感に腑が煮えるだろうとも思ったが、現時点では唯一の手がかりだ。ネオ・ジオンが……というより、フロンタルが手にすべき『ラプラスの箱』。そのための情報は細やかに、正確に把握しておきたい。
 情報さえ正しく入手できれば、あんなこどもに用はないはずだ。『協力者』として囲う必要など……
 ——いや、果たして本当にそうだろうか。
 少年を背中から包むように身を寄せたフロンタルの姿が脳裏をよぎり、ぎゅっと握り締めた拳にさらに力がこもった。
 窓際を離れ執務室の入口へと足を向ければ、ブーツの踵が強めに床を打って、いつもよりも少しだけ荒い音を立てる。茶器の残る応接セットが目の端に映り、早く下げさせなくてはと思いながら忌々しげに小さく舌打ちをした、その時だった。

「待て、アンジェロ」
 
 背後で響いた深みのある低音に足を止められ、アンジェロは姿勢を正して振り返った。
 声の主は椅子を小さく軋ませて立ち上がり、背後に手を組みながらコツコツと品の良い足音でアンジェロの前まで歩み寄ってきた。少し腰をかがめて、覗き込むように目を合わせてくる。
「いったい、何がそんなに気に入らない?」
 防眩フィルター越しでも感じる、すべてを見通すような青い視線。
 普段であれば、アンジェロが何を考えているかなんて、口にしなくともフロンタルには伝わっている。その問いこそがアンジェロを心から締め出していた証のように感じて、やりきれなさに顔をそらすも、フロンタルの長い指先に顎の先を捉えられて正面を向かされる形になった。
「こちらを向きなさい」
 穏やかだが逆らうことを許さない、強く涼しげな声音。
 いつだってこの声に心ごと絡め取られて、身動きひとつ取れなくなる。
 
 ——わたしだけを、見ていてくださればいいのに。

「……大佐がなさることで、わたしに不満など、なにも」
 不遜だ。
 自分のすべてはフロンタルのものだが、フロンタルのすべてが自分のものなわけではない。去来した思いはすぐにかき消し、ネオ・ジオンに属するものとして正しいはずの言葉を紡いだ。長い睫毛に縁取られた紫の瞳がゆらりと揺れる。
 きゅ、と引き結んだ唇を、白い手袋に覆われた親指の腹がゆっくりとなぞり、仮面の下の口元が薄く嗤った。
「おまえは、嘘が下手だね」
 そのまま落とされた、羽のように柔らかなくちづけ。
 アンジェロは瞼をおろして、そっとそれを受け止めた。

 何も持たなかったアンジェロに、すべてを与えてくれたのはフロンタルだ。
 呪わしい世界に復讐する力も。
 強く靭やかに生きていくための誇りも。
 命さえも捧げたいと思える新たな神の姿も。
 そして、焦がれた相手に触れられる身体の歓びも。

 他人に興味を示さないフル・フロンタルという男が、唯一興味を示してそばに置く人間であることがアンジェロの誇りだった。やれ稚児だ小姓だと揶揄してくる者は親衛隊長としての仕事ぶりで口を噤ませてきたし、誰よりもフロンタルのそばにいる者として、恥ずかしくない能力と矜持を維持してきたつもりだ。
 ただ、努力では得られないものもある。ガランシェール隊……マリーダ・クルスを目にするたび、ちくりと胸を刺すものもないではなかった。
 NZ−666《クシャトリヤ》は自分には扱えない機体だ。
 現在使用している《ギラ・ズール》はフロンタルの支援に特化した形でのカスタム仕様であり、性能としては申し分ないし、求められた役割を過不足なく果たすことができていると自負してはいるが。
 委ね、委ねられる信頼感こそがフロンタルの戦場を支える力であり、必要なのは一騎当千の殲滅力ではない……そう自身に言い聞かせ、小さな棘から目を背けてきたのに、それは突然鋭くなってアンジェロの心の柔らかい部分に深く刺さった。
 思わず引き金を絞ったマニピュレーターの動きが指先に残る。清らかな約束の世界を汚した《ガンダム》という穢らわしい汚物。
 コクピットから引きずり出した少年が着ていた白いパイロットスーツ。ヘルメットの後頭部には「NT New type device」の刻印があった。あの小僧もニュータイプだ。すべてを持っている恵まれたこどもが、何も持たないアンジェロからまた奪う。
 少年が座るソファへと歩み寄って右手を差し出したフロンタルの背中が、閉じた瞼の裏に焼き付いて離れない。

 なだめるような優しい唇は、すぐにアンジェロから遠ざかっていった。あんなにも苛立っていたのに、くちづけひとつで凪いでいく自分の心が恨めしい。
 「ふむ」と小さく唸る声がし、名残惜しさを感じながらゆっくりと目を開ける。
 視界に入れたフロンタルの顔は、相変わらず仮面に覆われていて表情が見えない。怒りと引き換えにやってきた切なさを胸に抱いたまま、再び退室を申し出ようとした時、手袋に覆われた大きな両手がアンジェロの両頬を柔らかく包んだ。

「……あ、あの、」
「『彼』のことが気に入らないのだね」
 紡がれる声は穏やかで優しい。
「セルジ少尉の件かな」
 尋ねられて、逡巡してから小さく首を振る。
「惜しいことをしました。まだ新人でしたが、素直で誠実な、見込みのある男で……ですが、戦場で命を落とす可能性は敵味方問わず等しくあります。わたしの、慢心は……否めませんが……」
「それについては、おまえたちのほうへと撃たせてしまったわたしに非があるか。《ガンダム》でなければ撃たせはしなかっただろうが……」
「そ、そんな! 大佐が、そのようなこと……」
 失言だった。フロンタルの戦いはいつだって完璧に美しくて非などあろうはずもないのに、とんでもないことを口にさせてしまった焦燥で言葉に詰まる。焦るアンジェロの姿に少し口角を上げたフロンタルは、挟んだままの両頬をふにゅ、と軽く押し潰した。
「ふぁ……?!」
「では、協力関係を求めたことへの反発かな」
「そ、れは……ッ」
 あやすような手遊びに困惑した瞬間、心の深いところへと一気に踏み込まれる。
 完全に虚をつかれた形になり、思わずありありと嫌悪の表情を浮かべたアンジェロに、フロンタルの口元の笑みが深くなった。
「正直でよろしい。……あの機体のコクピットハッチを開くのにどれだけ骨が折れたか、おまえは知っているね」
「それは……はい」
 とにかく外部からのアクセスを頑として受けつけず、技術者たちが手を焼いていたのをアンジェロも見ている。
「『箱』へと至る道標、鍵だという話だったが……一筋縄ではいかん機体だ。生体認証がかかっている可能性もあるし、プログラムの解析も難航するだろう」
「は……あの……」
 言葉を紡ぐ傍ら、フロンタルの左手の親指はアンジェロの頬の上を滑り、右手の親指は唇を擽って、ふにふにと弾力を楽しむように軽い愛撫を繰り返す。
 薄く侵入してくる指先にどう反応したらいいかわからず、戸惑うアンジェロの頬にうっすらと朱が差した。
「あの、大佐、」
「彼……バナージくんが我々に協力して、鍵を開いてくれるのが最も手っ取り早い。違うかな?」
 諭されているはずなのだが、悪戯な動きに意識を奪われ、言葉にまったく集中できない。
 ふにゅ、と唇の内側を押されて、反射的に上下の唇で指先を甘く喰んだ瞬間、「ふ」とフロンタルが吐息のように笑う気配がし、一気に首から上へと血がのぼった。
 ……そうだ、先ほどバナージ・リンクスに対しても、ここまでと言わずとも誘いをかけるような姿を見せていたではないか。
 羞恥と嫌悪が綯い交ぜになった感覚が背中を押し、愛撫を続ける指先が届かぬよう、大きく一歩身を引いた。「おや」と首を傾げたフロンタルに、じとりとした視線を向けてアンジェロは低く問いかけた。
「ヤツの価値観では、大佐の目指す世界を共に見られないように思えましたが」
「かもしれんな。そのためにこの身がある。この顔も、声も、作らせたマスクも、『赤い彗星の再来』という二つ名を最大限活かすためのものだ」
「……理念に共感できなくとも、大佐ご自身に心を奪われれば、裏切らない駒になるだろうと?」
「……おまえはどう思う、、、、、、、、?」
 ゆるりと笑う男の姿に、ぎり、と強く奥歯を噛む。
 アンジェロがそうだといいたいのか。
 次はバナージ・リンクスを——使えるニュータイプを、手駒としてそばに置くと?

 ……いやだ、そんなのは、

「ならば!」
 開いた右手でパンと強く、痛みに悲鳴を上げる自らの左胸を叩いた。
「その役目、わたしがいたします!」
「アンジェロ?」
「虜にすればいいというのであれば、隊にわたし以上の適任はおりません!」
 そうだ。
 そんなことは容易い。いままで星の数ほどの男たちを掌の上で転がしてきた。快楽を得ることしか頭にない男、疑似恋愛を楽しむ男、サディスト、純朴な青年、クスリでおかしくなった男、憩いを求める老人。どんな男の心も掴める『肥溜めの天使』。
 大佐のお手を煩わせる必要などない——アンジェロの唇がうっとりと嘲笑の色に染まる。
 吐き気を催す汚らわしい過去がフロンタルの役に立つというなら、どんなことでもしてみせる。そうだ、一度くらいは身体をくれてやってもいい。よりにもよって『清らかな乙女しか乗せない幻獣ユニコーン』を模した機体のパイロットなど、汚してやるのも面白いではないか?
「待ちなさい、アンジェロ」
「あんな……あんな、筆おろしも済んでいないような小僧など」
「……アンジェロ」
「籠絡するのは、わけもな」
 
「アンジェロ!」

 昏く心地よい悦楽の夢は、鋭い呼びかけで瞬時に弾けて消えた。
 目の前には、目の覚めるような赤い軍服を着込み、冷えた気配を纏う男。
 先ほどまでの甘やかさがすっかり霧散した空気に、比喩ではなくアンジェロの心臓が縮む。
「……、あ、………………」
 頭にのぼっていた血が、すぅっと音を立てて下がっていくのを感じる。脳が酸素を失って、世界がくらりと歪に廻った。
 ——怒っておられる。
 ——当然だ。大佐のなさろうとすることに、僭越にも口を出してしまった。
 何かを言わなくてはと口を開くも、震える唇は用をなさず、小さく掠れた声が喉を通るばかりだ。
 気が遠くなるほど長く感じた沈黙を破ったのは、フロンタルの小さなため息だった。
「ヤキモチを焼くおまえは愛おしいが、行き過ぎは毒だな」
「あ……あの、……」
 何も言えずに立ち尽くすアンジェロを前に、フロンタルの口元を苦い笑みが彩る。そのまま伸ばされた白い手に碧い制服の袖から覗く手首を掴まれ、くいと強めに引き寄せられた。
「え、わ、」
 つんのめるような形で広い胸元に顔を埋めてしまい、慌てて身を起こそうとするアンジェロをフロンタルの逞しい腕が抱き込む。
 洗いたてのリネンを思わせる清潔感の中に優雅で上品な色気が混じる、嗅ぎ慣れたコロンの香りに包まれて、凍りついていた心臓がとくりと全身に血液を送る気配がした。
「た、大佐」
 突然の包容に、動揺と困惑で長い睫毛を瞬かせる。戸惑うアンジェロの髪に落ちてきたのは、フロンタルの優しいくちづけだった。
「不安にさせてしまったな。もっとたくさん伝えていかなくてはいけないね」
「お、怒って……いらっしゃらないのですか?」
「怒っているように見えるのか?」
 くすりと笑って問いかけられ、返す言葉もなく眉尻を下げる。先ほどの気配からは確かに冷たい怒りを感じた気がしたのに、目の前の男にはそれがない。
「怒ってなどいないよ。ただ、わたしの大切な薔薇を蔑ろにしようとしたことは看過できんな」
「あ…………」
 髪から目尻へ、そして頬へと滑り落ちてくる唇。そこから紡がれる柔らかな叱責に、困惑の色を宿していたアメジストの瞳が大きく見開かれ、頬がうっすらと薔薇色に染まった。
「……まあ、そうさせてしまったわたし自身には少し腹を立ててはいるがね。怖がらせてしまったのならすまなかった」
「そんな、大佐」
「わかっているだろうが、あんなことを言ってはいけない。いまのおまえは、わたしだけのために咲く花なのだから」
 フロンタルの言葉からは『自分を大切にしろ』というニュアンスだけではない、仄かな独占欲が滲んで聞こえて、アンジェロの鼓動はとくとくと速さを増していく。
 見上げた表情は仮面に覆われ、相変わらず窺い知ることができなかったが、形の良い口元からは呆れたような溜息が漏れた。
「おまえはあまりにも健気がすぎて、なにをしでかすかわからないからな。気が気ではない。……無茶をしないように、きちんと言い聞かせておかなくてはね」
「な、何を————ん」
 言いかけた言葉はそのまま、愛しい唇の中に吸われて消える。先ほどの触れるだけのくちづけとは違う、呼吸を奪う深いそれ。
「おまえ以外をそばに置く気はないし」
「おまえ以上に誰かを信頼する気もない」
 ちゅ、ちゅ、と湿った音を立てながら合わさる角度を変えるたび、欲した言葉が降り注ぎ、アンジェロの心臓を甘く締め付けていく。
「もちろん、おまえ以外に口づけるつもりも」
「……、ん…………」
「おまえ以外と夜を共にするつもりも、ない」
「………………!!」
 最後の言葉は唇を離し、吐息とともにとろりと甘く耳元から滑り込んできて、アンジェロはたまらず大きく身を震わせた。
「納得したか?」
 穏やかで悪戯な声に軽く顎を引き、眉を寄せてフロンタルを見上げる。
「た、大佐は、意地悪です…………!!」
「ほう。どうして?」
「だって、」

 こんなの、今すぐ愛してほしいに決まっている。

 ここまでされて、満足ですと離れられるわけがない。思う存分触れ合って、心も身体もフロンタルでいっぱいに満たされたい。
 両腕を伸ばしてフロンタルの首筋へと絡めると、今度はアンジェロのほうからフロンタルの唇を追い、伸ばした舌をゆるりと差し入れた。腔内で絡めた舌を自分のほうへと引き込んで、舌先に甘く歯を立てる。夢中になって吸いながら下半身を強めに擦り付ければ、キスの中に笑いが溶ける気配を感じて、期待に昂るアメジストの瞳が揺れた。
 ぐい、と腰を強めに抱かれて、熱に浮かされるまま赤い上着の首元に指を伸ばす。
 詰襟のホックをぷつりとはずしたところで、先を求める指先は白い手袋に包まれた長い指に絡め取られた。
「ここまでだ、アンジェロ」
「………………」
 ずるい大人の言い分だ。上目遣いに不満を表明してみせても、マスクの下の口元は穏やかな笑みの形を崩さない。
 諦めて小さく息をついた。——やはり、大佐は意地悪だ。
「《ガンダム》の様子を確認するのだろう? 行きたまえ」
 そうだ、確かにそう言ったのは自分だった、と、もう一度ため息をつく。このあとの予定を頭の中で反芻し、一息に気持ちを切り替えた。
 長めにおろした前髪をかきあげ、目を閉じて大きく一度深呼吸をすれば、高潔で麗しい『フル・フロンタル親衛隊長』のできあがりだ。
「……失礼いたしました。仕事に戻ります」
 敬礼をして踵を返す。背後からふたたび「アンジェロ」と呼ぶ声がし、まだなにか、と振り返った。
「今日は業務の報告をゆっくり聞こう。夜、わたしの部屋まで来なさい」
 
 ——続きは夜だ。
 
 言外の誘いに、思わず数度、瞬きをする。
 もはや民間人の少年の肩を砕き損ねたことなど、大して気にもならなくなっていた。
 「はい」とはにかんだ笑みで返すと、アンジェロは軽やかな足取りで大きな扉へと向かった。